Shin Yamagata

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10月22日
5時半に目が覚めた。目覚めてしまったのだからどうしようもない。すぐにもう一度眠れそうな気配はないのだけど、だからといって起きるには早すぎる。とりあえず一度トイレに向かう。一度立ち上がって布団に入れば意外にすぐ眠れたりするんじゃないかと思ったのだけど、全然眠れそうにない。外では鳥が鳴いている。ヒヨドリだ。意識がはっきりしているわけではない。鳥が鳴いたのを聞いてからまだ5分くらいしか経っていないだろうと思っているのに実際には三十分くらい過ぎていて、でも、驚きはしない、でも眠れない。明るくなっているような気がするのだけど、目が開いていないような気もしないではなくて、

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11月15日
眉間に眠気がずっと漂っている日だ。何もできない。寝たほうがいい。寝たほうがいいのはわかっているのだけど、寝てはいけない日もある。今日は寝てもいい。二十分寝た。起きたら足の間に犬が挟まって寝ていた。どこから来た犬かはわからない。赤い首輪が付いているから誰かの飼い犬だ。SASAKOと首輪に刺繍が入っている。犬の名前だろうか。ささこ。呼びかけると、犬が顔をあげた。手を出すと鼻をヒクヒクと突き出し手の匂いを嗅ぐ。犬の嗅覚は人間の何倍かは忘れた。とにかくこれで私の情報は犬にすべて伝わった。ささこがのっそりと立ち上がり、猫のように背中を丸めて上に伸び上がった。犬だと思っていたささこは猫だった。

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4月23日
朝一番に病院へ行き、9時前には病院を出た。天気予報では曇りだといっていたのに晴れていて、まだ曇ってくる気配はなかった。これならカメラを持ってくるのだったと思うのだけど、手元には小さなカメラしかない。仕方なく小さなカメラを右手に握り、歩きはじめる。まずは商店街を目指すことにする。途中にあった小さな神社の脇の踏切がカンカンと鳴りはじめ、音の大きさに驚きながら、そう言えば東京の踏切の音はもっとソフトな音のような気がすると思ったのだけど、比べようがない。もどかしさを感じながら、通り過ぎる黄色い電車を眺め、踏切は渡らない。シャッターは押した。

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9月24日
校内の畑には里芋、さつまいも、えごま、モロヘイヤ、空芯菜、なすび、ピーマン、ブロッコリー、オクラなどが部員によって植えられ管理されている。ようやく雑草との戦いから解放され、芋の収穫を待つばかりとなった畑に足を踏み入れ、えごまの小さな花を眺めた。紫蘇に似ているけどかじっても紫蘇の味はしない。顧問の先生は脇にある納屋に入ってごそごそと何かを探している。

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12月15日
山手線に乗って降りて駅の外へ出た。風が強くて冷たい。川なのか運河なのか、植え込みで見えないのだけど、その横を歩いていく。水の気配はない。橋を渡ったのだから、その川なのか運河なのかわからないものを越えたのかもしれない。下は見なかった。信号の向こうの海の向こうにクレーンがたくさん見える。オリンピックで使われる何かの施設を作っているらしいと前に聞いたのだけど、何の施設かは忘れてしまった。海の近くなのだから、ヨットか何かの施設だろうか。信号を渡ってちょっと進んでから、すぐ引き返し、頭上の高速道路の隙間から見えるビルに反射する太陽の光にカメラを向けた。気になったのに無視して歩いてはいけない。

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7月1日
公園の地面には蝉が出てきたような穴がいくつかあいているけど、蝉の声はまだ聞こえない。抜け殻を探してもみつからない。30度を超える日が何日も続いているのだから蝉は鳴いていてもおかしくはないし、目に入る風景や感じている暑さや湿度のすべてがもう夏だと告げているのだから、蝉が鳴いていないことがむしろおかしく思えてくるのに、蝉がいない。穴は蝉ではなく別のものが出てきた痕跡なのか、あるいは、出てきたのは蝉だけど、鳴くまでには数日かかる、もしくは、最初に出てくるのはメスだけとか、色々考えたところで何もわからない。この穴は