Shin Yamagata

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12月18日
電車に乗って買い物に出かけた。駅に着いて、目的のものが売っている店へ行こうと思ったのだけど、せっかく来たのだからちょっと古本屋にも寄って行こうと思い、だったら買った重たい物を持って歩くよりは古本屋にいってから最後に目的のものを買うのが道理だ、と思ったのが間違いだった。古本屋にはずっと探していてなかなか見つからなかった古本が二冊もあった。それも良心的な値段、これじゃあまるでブックオフではないか、というような値段で売られていた。古本を手に入れて喜んだわたしは普段は入らないパン屋に入り、前から気になっていたラムネパンという、あからさまに人工的な水色のクリームを挟んだパンを買ってしまう。今すぐ食べたい、でもどこで食べたらいいのかと考え、その前に、どこかでコーヒーを、と考え直し、それならコンビニの百円のコーヒーだ、食べるならあそこの大きな公園、と

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7月15日
山手線に乗る。座れない。座りたい。この暑さだ、仕事をする前から疲れたくはない。座っている人を見る、どの人が次の駅で降りそうなのかわからない。何かを考えるのもめんどくさい。暑い、だるい。つり革にぶら下がるように掴まって外の風景を眺めたり車内を眺めたり。次の駅でも座れない。窓から駅のロータリーがちらっと見える。風景は夏だ。眩しい。街路樹の緑とビルのずらっと並ぶ窓と道路を走る車。窓ガラスに少し色がついているのか、全体的に青っぽい。これが旅行に来たときの風景なら、と思おうとする。少しだけ気分が変わるような気がする。東京観光だ。次の駅も誰も降りない。日傘をさして歩く女、スーツの上着を着たまま歩くサラリーマン、目に入る風景が暑い。観光気分にはなれない。次の駅でようやく座れた。目をつむってイヤホンから聞こえる音楽に集中する。そのとき流れていたのは土岐麻子のなんとかドライブみたいな曲だ。

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6月24日
前を走る車がまばらで、少し先の陸橋の曲線が気持ち良さそうに見えている。上りはじめてすぐ右へゆるく曲がりはじめる陸橋の向こう側にはビルが点々と突き出て見えている。速度を落とさないまま車体を右側に傾け陸橋を上っていく。減速せずに曲がることができる緩いカーブが気持ちいい。上るにつれて、林立したビルの四角の連なりと空だけの風景が広がり、頂上の手前あたりから今度は左に曲がりはじめる。様々な形のビルの四角が遠近を含めてずらりと視界を横切っていく。下った先の信号は青だ。

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5月13日
昨日、携帯電話が壊れた。壊れたといっても電話はできる。ただ、画面に何も映らなくなった。文字を見ることができないから、メールはできない。その他の操作もできない。電車に乗れば、前に座る人も横に座る人もだいたいスマホを見ている。ゲームをしている人もSNSをのぞいている人も動画を見ている人もいて、スマホを見ていると言っても内容は人それぞれだ。隣に座った人がゲームをしていれば、そのゲームをじっと覗き込んでしまう。ゲームをしている人は見られていることに気づかない。集中すれば周りに対して鈍感になる。何かをやれば何かをしなくなる、できなくなる。人間は

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4月6日
川から離れて坂道を上っていく。膝に手をつきながら上るような急な坂道を上って振り返ると、谷筋に屋根がびっしりと詰まった町が一望できた。上りきった場所は台地というほど広くなく、ほとんど尾根のような場所で、道路の脇に数件の家があるだけだった。反対側に下りながら見えている町はついさっき眺めていた谷を流れていた川が合流する本流の周りに広がっている町だから、背中側にある町とは比べものにならないくらいに大きく広がっている。

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6月18日
カメラを持って出たものの、写真は一枚も撮らない。八朔の葉を丹念に見てアゲハの幼虫を探し、排水溝に潜んでいるアオダイショウを探すために腰を屈め、撮りもしない雲の形を眺める。昨日よりは湿度が高いものの梅雨の嫌な暑さはなく、どちらかといえば夏の涼しい日に近い。階段を降りて川沿いを歩く。遠回りをして駅前の商店街に向かい、肉屋でコロッケとワイルドベーコンを買う。八百屋でブロッコリーと人参を買い、古本屋を少しのぞいて日影の中を歩いていく。片側二車線の大きな通りを渡り、住宅街のあちこちに咲く紫陽花の色に目を向ける。尻尾を左右に激しく振る