Shin Yamagata

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3月31日
無精髭、ダボっとしたスーツやピタッとしたスーツ、指笛を吹いた、後輩にえらそう、見た目はエグザイルとヤクザの中間、圧倒的な男社会臭、そういう人の集まりに参加していた。これからいくらでも酒が飲めるというのに、缶チュウハイを飲みながらやってくる男もいる。こういう感じが日本の標準なのだろうか。マイクを握った男は、その団体に所属していない人がいるにも関わらず、その団体にどっぷりと浸かったことを話しはじめる。いわゆる内輪ネタというやつで、笑えない。まったく笑えない。その団体に所属している男たちは低い笑い声を上げている。その団体に属していない男も女も愛想笑いを浮かべている。男社会の上下関係的話を繰り返し、話している本人が話しながら笑っている。これが

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4月7日
日曜だからバイクが多い。こちらは原付なのだけど、すれ違いざまにときどき手を挙げてくれるバイクの人がいる。こちらは盛大に手を振り返す。曲がりくねり、おまけに追い越すことのできない狭い道が続く区間では車が詰まっていることが多く、見通しのよい二車線になった途端、先頭の遅い車を後続の車がどんどん追い越していく。流れに乗って一緒に追い越していく。峠をのぼっていくごとに桜がしぼんでいく。ほんとうはしぼんでいない。まだ咲いていないだけだ。だけど、どうしてもしぼんでいくような気がしてしまう。そして、峠のてっぺんからくだりはじめると、今度は徐々に桜が咲きはじめる。標高にして600メートルもくだれば、今度は桜が散りはじめている。川沿いを

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4月8日
眼下に旧道が見える。米粒ほどに見えるバイク3台が山に爆音を反響させて通り過ぎていく。ハーレーだ。ウグイスが鳴いていてカワラヒワがつい力が緩んで漏れてしまったような声を出しながら頭上を横切っていく。脚の長さをきちんと調節しないと三脚が倒れてしまいそうなほどの強い風が吹いている。山から盛大な葉擦れの音とともに杉の幹がしなる音が聞こえてくる。石垣の隙間から草が生えてきている。そこにレンズを向ける。石垣の上にはホトケノザのピンク、その上の斜面のままの畑も画面に入る。菜の花の黄色までは画面に入らない。ピントを確認する。露出は変わらない。シャッターに指を添える。

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1月20日
今日の一日は昨日と何か違ったのだろうか、などという問いを発したところで答えは決まっている。何も違わないし全てが違っている、だ。要するにそういう問いに意味はない。そのような意味のない問いにとらわれてはいけない。だけど、そのような意味のない問いを真剣に考え悩んでいる姿を、人に見せようとする人たちがいる。人生とは、写真とは……。多くの人たちはそんな問いを発する前にすでに実践している。

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12月18日
電車に乗って買い物に出かけた。駅に着いて、目的のものが売っている店へ行こうと思ったのだけど、せっかく来たのだからちょっと古本屋にも寄って行こうと思い、だったら買った重たい物を持って歩くよりは古本屋にいってから最後に目的のものを買うのが道理だ、と思ったのが間違いだった。古本屋にはずっと探していてなかなか見つからなかった古本が二冊もあった。それも良心的な値段、これじゃあまるでブックオフではないか、というような値段で売られていた。古本を手に入れて喜んだわたしは普段は入らないパン屋に入り、前から気になっていたラムネパンという、あからさまに人工的な水色のクリームを挟んだパンを買ってしまう。今すぐ食べたい、でもどこで食べたらいいのかと考え、その前に、どこかでコーヒーを、と考え直し、それならコンビニの百円のコーヒーだ、食べるならあそこの大きな公園、と