Shin Yamagata

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絵を描いている時にあることをふと思い出した。たぶんあれは小学校に行く前だから4歳か5歳くらいだったのだろうか。人の顔を描いていて、耳も描きなさいと誰かに注意されたことがあった。要するに耳のない顔を描いていたことになる。それでもどうしても耳が描けなかった。耳なんてどう描いていいのか全然わからなかった。わからないのに描けといわれても何を描いていいのかわからなかった。耳をよく見なさいと言われて、その人の耳をよくみたけど、ウネウネしていてなにがなんだかわからないと思っていた。だから耳の輪郭さえもわからなかった。「輪郭」なんてその頃は考えたこともなかっただろうし、「輪郭」なんて知らなかったのだと思う。モノが「輪郭」とそうでないものに分かれることを知らなかった。耳は耳でしかなかった。とにかく耳を見ればウネウネして何がなんだかわからないものでしかなかった。顔の横にどうしてこんなものが付いているんだろうかと不思議で仕方なかった。とにかくその入り組んでいてウネウネしたものは描くという行為につながらなかった。手が動かないのだから仕方がない。凸凹していてそしてそれだけではなくて曲がりくねっているようなもの、そして穴まで開いている!!そんなものは描けるわけがなかった。顔は丸を描き目も丸を描き鼻は「く」の字を描き眉毛は線を引っ張り口も線を引っ張る。それくらいのことしかわかっていなかった。わかっていなかったというか、そうしか出来なかったし、そうするものだと思っていたのかもしれない。だから耳は絶対に描けなかった。耳を数字の「3」のように描くことも知らなかったから、どうしても描けなかった。耳はあまりにも複雑すぎた。複雑という言葉も知らなかった。ウネウネとかクニャクニャとかそんな言葉しかなかった。とにかく描けないのだ。描けるわけがないのだ。耳なんてなくなればいいと思った。なぜ耳なのか。耳がどうしたというのか。書きながら興奮してきたけど、そういうことを思い出した。