Shin Yamagata

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かえる




アップフィールドギャラリーのすぐ下には川が流れている。その川にかかっている橋を渡っていると、たぶん橋の欄干からだと思うけど、ビョ〜ンと大きめのアマガエルが飛んできて地面にペタリと落ちた。こう書くと正確さに欠けるので、もう少し書き足すと、歩いていると目の前を何かが横切るのが見えて、それが地面に落ちたその瞬間にベタリという生っぽい感触と共に深い緑色のカエルが目に入ってきて、その瞬間にアマガエルだと思った(まさかモリアオガエルではないだろう)。書き足したけど、たいして変らなかった。
その近くを歩いていた3人くらいがそれをちょうど目撃することになって、それぞれ違う反応を示していた。チラッとみてそのまま無視する人。歩く速度を緩めちょっと見るけどそのまま通り過ぎる人。見て、かえるだとわかった瞬間に露骨に嫌な顔をして一歩くらいそのカエルから遠ざかって歩く人(女)。僕は立ち止まって「おお、こんなところにアマガエル。」って思って少しアマガエルを見ながら、そうやって他の人の反応も見えたりしていた。そして、糸崎さんならここで地面にしゃがみ込むなり寝転ぶなり(雨で路面が濡れていたからさすがに寝転んだりはしないか)して絶対にこのアマガエルの写真を撮るだろうな(こういう状況の場合きっと糸崎さんなら背景に帰宅途中のサラリーマンの姿を映しこむに違いない)と思い、僕もちょうどカメラを持っていたから撮ろうかどうか迷い始めたけど、なんとなく結局やめてしまった。
そして歩きながら、
いや、そういうことではいけない。カメラを出すのがめんどくさいとか、人通りがそこそこあるところでしゃがみ込みにくいとか、そんな理由で写真を撮らないなんて馬鹿げている。もしかしたらあのアマガエルはあの場所で人に踏み潰される可能性もあったからもっと安全な草むら(草むらなんてはたしてあるのだろうか)とかに避難させた方がよかったんじゃないか、やっぱりあのアマガエルに触りたかった、そういえば、前に住んでいたところはこの季節になるとヒキガエルがあっちこっちから出てきて、そいつを捕まえては(ヒキガエルくらい大きくなると掴んだ時に何か得体の知れない生き物を掴んでいるような少し恐怖に近いような感覚がある)住んでいたところの横に建っていた大家さん家の大きくて立派な庭に掘り込んで(大家さんの家のひろい庭には池まであったからそこでそのヒキガエルが卵を産んで、その池がおたまじゃくしでいっぱいになればいいのにと真剣に思っていた)、この庭でしっかり繁殖してくださいと願っていたことや、やっぱりかえるってすばらしい(何がすばらしいのかわかっていない)とか、なぜあのアマガエルは橋の欄干から歩道に飛び出したりしたのだろうか、そんなことを言えば、もぐらだって地面を飛び出してアスファルトの道路を渡ろうとしてよく車に轢かれているではないか(都心ではそんな光景はお目にかかれない)、とかそういうことを思うこととなっていた。