Shin Yamagata

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ひな祭り





歩いていたらおばさんに声をかけられた。「どこから来たんですか?」「東京です。」「まーえらい遠いところから、この辺はですね〜、」と話が始まってしまい「どうぞ」ということになって閉まっているところをわざわざ開けてくれて、まだ準備中だけどももうすぐしたら公開するというひな祭りのときに飾るものすごく豪華なひな人形が並んでいるのを見せてくれた。それからそのひな人形にまつわるいろいろな事を話し始めたりして、そうしているうちにおじさんが一人やってきて、「どこから来た?」「東京です。」とさっきと同じ返事をしておじさんも混ざってまた話をしていると、おじさんはおじさんでおばさんとは違う方向からひな人形について話し始めて、なぜこんなに豪華なひな人形がこの辺にあるのかとか、昔はこの地域はこんなのやあんな産業があって栄えていたとか、女はミシンを踏んで男の倍くらいは稼いでいたとかそういう話になっておばさんよりおじさんの話のほうがおもしろいと思って、なんだかんだと質問したりしている間に一時間以上過ぎてしまい、やばいやばい撮影する時間がどんどんなくなっていく、と思いながらもう質問をしないようにしていたのだけれども、おじさんの話はもう止まらなくなってしまっているようで、「じゃー、そろそろ、、」という一言を言うタイミングを逃し続けていると、途中でいなくなっていたさっきのおばさんが戻ってきて、「あら、まだひな人形についてしゃべってるの?あなたは学者さんか何か?」なんて言い出したので、今しかないと思ってしまって「じゃーまたちょっとブラブラ歩いてきます。いろいろお話をありがとうございました」と言って、なんとなく無理矢理逃げた感じを残してしまったかなと思いながら歩き始めたときにはもう影が伸びすぎていて撮影できる時間は終わっていた。