季節

バタバタしているあいだあまり外を歩かなかったし、歩いたとしてもそれほどまわりを見て歩いているわけではなかった。久しぶりにゆっくり歩くと、もうあちこちで花が咲いていたし、つくしなんかも出てきていてすっかり春になってしまったようだった。近所の家の庭に植えてある小さな桜の木にはもう花が咲いているし、道端の草も伸びてきていて、その隙間に小さい花が咲いていたりする。モクレンの花はもう開きすぎているし、歩いていると何かの花の匂いが常に付きまとっている。そういう植物の変わりようを見ながら、今年の春の一時期をすっぽかしたような気持ちになった。この木の花はもうすぐ咲きそうだとか、陽射しが春っぽくなってきたとか、生暖かい風が強く吹いているだとか、そう思う(感じる)積み重ねがほとんどないまま時間が過ぎてしまって、ふと気がついたときには花が咲き始めてしまって外の景色がすっかり変わってしまっていた。外の景色が変わったというか、突然がらっと変わってしまった感じで、なだらかに続いている変化をほとんど実感することがないまま、ある時間が過ぎてしまったということになる。冬と春のあいだにある名前の付いていない季節を今年はすっぽかしてしまったような気がする。それはとても残念なことに思えて仕方がない。