Shin Yamagata

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一升瓶




桜の木の下でカラフルなビニールシートの上にカセットコンロを置いて、もちろんそのカセットコンロは風除けのためにガスコンロの周りによくあるアルミの衝立のようなもので囲まれているからカセットコンロそのものは見えていないのだけれど、登山家のような格好をした若い男五人がカセットコンロを囲むように座り、一人の男は隣の男の紙コップに一升瓶を傾け、別の男はカセットコンロに向かって菜箸を突き出し、また別の男は自身の後ろに置いてあるかばんに振り向かないまま手を伸ばし何かを出そうとしている、それらの様子を眺めているあなたに向かって南から暖かい風が常に吹き続け、その風の中には桜の花びらと沈丁花のかおりも含まれている。今年も春を迎えることができたとあなたは思うはずだった。