Shin Yamagata

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10月26日




「人間としてちいせぇーんだよ、うつわが。」と夜道の路地を倒置法を使って携帯電話でしゃべっている見知らぬ男とすれ違った。ちいせぇーのか、俺はちいせぇーのか、俺に言った訳ではなく携帯電話の向こうの話し相手に言っているのだし、それは携帯電話の向こうの話し相手のことを言っているのではなく、携帯電話の向こうの話し相手が愚痴をこぼしていて、こんな奴がいてほんとにイラつくんだよね、と言ったときに、今すれ違った見知らぬ男がその言葉に同意するように発せられた言葉だから、その見知らぬ男も知らない相手のうつわが小さいのかもしれない。その見知らぬ男とすれ違った後も男は会話を続けていたが、すれ違ってしまった後はもう何を話しているのかは聞こえない。耳の穴はもう見知らぬ男とは逆の方向を向いている。