Shin Yamagata

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1月18日




インチキ。怪しいな。
白い長めのコート、膝上10センチの黒いスカート、膝まである黒いブーツを履いた若作り満々の茶髪50歳前後の女が40歳前後の眼鏡をかけた女に何かを勧めている。話を横から聞いていると仕事を斡旋しようとしているようだ。コーヒーとパンはもちろん50歳前後の女のおごりだ。話し方がすでにインチキくさい。抽象的な話から相手の私生活を聞きだし、そこにつけこむようなカウンセリングっぽいものが始まっている。「暴力カウンセリング」と名付けよう。暴力カウンセリングに持ち込まれた時点で眼鏡女は敗北している。先ほどまでの一応少しは用心したような話し振りはすっかりなくなり、自ら進んで自分のことを話し始めてしまっている。こうなってしまえばあとは話を聞きながら頷いていればいいのだ。うまいことやりやがったな、若作り満々女め。暴力カウンセリングの合間に仕事の話をうまいこと挟み込みやがる。眼鏡女は「勉強会」に参加することが決定した。聞いている限り、給料のこと、労働時間のことには抽象的に触れられるだけで、具体的な数字は一切出てこない。履歴書がもう一つ必要らしい。どう考えても怪しいでしょ、やめときなはれ、あんた、うまいはなしはさけてとおりはなれ、くろうしてこそなんぼのせかいでっしゃろ。話の中心は眼鏡女の私生活だ。子どもの話から両親の話、この先の自分の人生の話。絵に書いたような話のもっていき方に感心せざるを得ない。眼鏡女は若作り満々女がいうところの「営業所」に本日直行することになった。若作り満々女のテンションが上がっているのがわたしには手にとるようにわかるのです。