5月28日

久しぶりのバライタはなかなか調子が掴めない。停止液の中にバライタ紙を入れると紙が泡を吹きながら鳴きはじめる。そのことを含め、暗室作業のことを魅力的に書いていた石内都の何かの本のことを印画紙の鳴く音を聞いていると思い出すのだけど、鳴き始めた頃に印画紙を引き上げて定着液の中に放り込んでしまうので、石内都が書くような魅力的な時間とは何かが違っている。ネガをセットしてタイマーのボタンをポンと押す。露光中の画像をぼんやり見ているとパチンと画像が消えて露光が終了。印画紙を時計を見ながら現像液の中へ浸すけど、印画紙は裏返っているから画像が浮かび上がってくるのは見えない。時計を見ながら時々攪拌して時間がきたら停止液へ。印画紙が鳴き始めると今度は定着液へ。そこで印画紙をひっくり返すから浮かび上がった画像と対面できる。電気を付けて画像を確認して、だめならもう一枚焼き直す。焼き込んだりしないし、特別な薬品を使って黒を浅くしたりしないし、印画紙を現像液の中でこすったりもしないし(温度を上げた現像液の原液をスポンジにつけて印画紙にこすり付けたりすると出ない部分が出たりする)、露光中にたばこを吸ってその煙で画像を滲ませたりもしない(あの滲みにどれほど憧れたか)。わたしが決めるのは濃度とコントラスト。わたしは素朴な暗室です。