Shin Yamagata

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5月30日




バライタに伸ばすのが3日目にもなればイーゼルマスクに投影されたネガの状態の画像を見るだけで何秒露光するかのおおよその見当はつくのだけれど、念のためのテストプリントは欠かさないところが慎重派といわれる所以である。パリッとしたプリントを目指すのだけど、それはいわゆるファインプリントとはよばれない。ある人に写真を見せたときに、ちょっと硬いねー、もっとグレーを出した方がいいね、なんて言われたことがあって、そのときのわたしの心境は、じゃーお前がやれ、あるいはお前はアホか、あるいはあんたにはもう二度と関わらない、あるいは。モノクロプリントには「ファイン」とよばれるようなプリントのトーンがある。どういうわけかその「ファイン」なプリントをありがたがる風潮があり、目指す風潮があり、そういうのを目指す人はどういいうわけかまず「ファイン」が先にある。自分がやりたいことよりもまず「ファイン」がある。とにかく「ファイン」である。「ファイン」なのだ。だからそれはわたしが嫌々受けてきた義務教育と同じだ。そしてちょっと写真をかじっている見る側の人間にもそれを求めるものがある。それは見る側の自由じゃないか、と言われればそれまでだが、そういう人は何を見ているかといえば要するに自分が知っている「ファイン」に、見た写真が当てはまるかどうかだけで写真を見ていて、当てはまらないからといって別の方向へ見ることをシフトしていくことはせず、プリントがダメだ、といって見ることをやめてしまうのだった。もちろんそんな人だけではない。色々思い出して少し悪口を言いたくなったのだ。