Shin Yamagata

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10月14日




ほんのりとピンク色に色付いた白っぽい肉にナイフを入れていると窓の外に白黒のネコが現れ店内を覗き込んでいる。食事をしていたほとんどの人間がそのネコに視線を向け、まあ、とか、あら、というそっと吐き出す息のような声をあげた。何か欲しいのかしら、ここのお店の飼いネコかしら、あるいはいつも何か食べ物をあげているのかもね、とパンをちぎっていたおばさんは向かい側に座っている男に言い、その二人のテーブルの隣にはこの場の会計はわたしがすべて持ちますといわんばかりのピンク色のジャケットを着たおじさんが5人の女と1人の男に囲まれ常に話の中心になり、これはエゾジカかね?エゾジカ以外のシカはいつ入るのかな?などとわたしは食通ですといわんばかりの態度でこの店のシェフの嫁で痩せこけていながらも幸せそうな店員に話しかけている。そんな店内に向かってネコは少し鼻を突き出ししばらく店内を見てから立ち去った。