Shin Yamagata

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5月9日


久しぶりに暗室へ。ベタ焼きとキャビネ。一枚目のベタ焼きが真っ黒になってしまったからどこかで光を当ててしまったのだろうけど、それもムラなく真っ黒になってしまったから印画紙を出したまま電気を付けてしまったとかそういうことしか考えられないのだけど、そんなことをした覚えはないから、知らない間に印画紙の箱を開けてしまっていて全部の印画紙がダメになっているのかもしれないと、かなり焦りながらもう一枚作ってみたら何の問題もなくきれいなベタ焼きができてしまったから、それこそきつねにつままれたような顔をしながらしばらくベタ焼きを作るのに専念した。ベタ焼きを作っている間は機械的な作業だし、いちいち電気を付けて確認もしないから印画紙に焼き付けられた小さな画像を見ることがないまま時間が過ぎていく。その時間はぼんやりラジオを聞きながら作業しているのだけど、突然どこかの風景が頭に浮かぶことがある。それはベタ焼きを作るために触れているネガがかつてあった場所とは関係なく、もうどこかも覚えていない風景がふっと頭の中を横切っていく。その風景は写真に撮られた風景ではなく、ただぼんやりと歩いていた風景で、今回浮かんだ風景は、どこかの駐車場で、その近くに小さな川が流れている感覚があり、海も比較的近い、というようなことまで一緒に感じることができる。それは夏だ、ということまではわかる。それでもそれが山陰なのか瀬戸内なのか東北なのか、そういったことは一切わからない。ただどこかの風景がそのときその場にいた感覚を伴ってふっと現れることがある。