Shin Yamagata

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6月25日




公園を歩いていたあなたの足元の草は一昨日刈られたばかりだからあなたは草の匂いの中を歩いていたあなたの耳をすませば蝉の声が聞こえそうな気がするのに実際にはまったく聞こえず鳩の声さえ雀の声さえ聞こえないあなたの横の木でできたベンチは湿っていて座る気にならないからあなたの歩きを続けていたあなたの目の前にいた黄色いくつを履いた小さな男の子が転んだ。おそらく柴犬がはいった雑種の犬を連れたおばさんが犬の糞を拾うためにかがんだ腰の曲線がおばさんの向こう側にあった大きなイチョウの根元と重なりそれを見ていい具合だなどと広い公園を三周すれば一時間が過ぎ草のにおいのことなんてもうすっかり感じなくなっていたあなたの鼻はあなた自身のにおいにそろそろ気付く頃だった。ちょうどそのとき頭上を黄色い鳥が飛んだような気がした。その黄色い鳥はインコで公園の脇にある7階建てのマンションの三階の窓から一週間前に逃げ出しそのインコを追いかけてマンションから出てきた中学三年生の女の子は泣きそうな顔をして公園内を走っているのを見ていたあなたはその女の子のことが気になって気になって仕方がなかったあの頃がすでに懐かしいと感じているあなたはあなたのそのことを知っていた。