Shin Yamagata

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12月29日
住宅街の中にある緑道を歩いていた。脇の民家の庭に大きな柿の木がある。空の濃い青を背景にしたオレンジの柿の実にカメラを向けていると、おばあさんが話しかけてきた。前にも話したことのあるおばあさんだった。これから散歩に行くところ、今日はよく晴れている、元気の秘訣は何だ、一方的に話してくるのを、はあ、そうですかー、と聞いていると、あの向こうの橋のところで、とおばあさんが言った。この近くに橋はない。だけど、この緑道がかつて川だったことは知っている。おばあさんの頭の中にはここに川が流れていた風景とそこに架かる橋の風景がまだ残っているのだと思い、ここが川のときからこの辺に住んでいるんですか? と聞いてみた。昭和46年まで川だった、畑しかなかった、そこの小学校は畑の中にぽつんとあった。おばあさんが思い描くこのあたりの風景がわたしの頭の中に流れ込んでくる。だけどおばあさんの話はすぐにそれて、別のことを話しはじめる。何度か川の風景の話に引き戻そうとするのだけど、すぐにそれていく。諦めて、おばあさんの息子の話を聞いていた。