Shin Yamagata

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10月9日
太陽が沈んでいく。赤みの残る空が隣を歩く男の顔を赤く染めていた。赤い顔は、夕日のせいばかりではなかった。男は怒っていた。穏やかに怒っていた男の怒りが頂点に達しようとしていた。ちょっと待ってくれ、と言って、空き地に生えている紫蘇の種を採るのに手間取ってもたもたしている男を、わたしが、ついきつい口調で、早くして、と急かしてしまったのが事の発端だった。男は、近所に生えている紫蘇の種を採って住んでいるところの裏の空き地に蒔いておくのだ、と夏前の紫蘇が芽生えはじめた頃からずっと言っていた。そのことを知っていたにも関わらず、ついきつい口調で言ってしまったのには理由がある。わたしの友達と一緒にその男がご飯を食べたときだった。友達が深刻な話をしているというのに、その男は