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11月4日
あなたは目の前に座っている年増のカップルの男女に暴言を吐きそうになる衝動を抑えていた。ついさっき、赤ちゃんを背負った若くて小さな女の人のベビーカーが、荷物の重みに耐えかねてうしろに倒れた。電車は空いていた。ベビーカーは誰にもぶつからなかった。周りの人がすぐにベビーカーを起こし、赤ちゃんを背負ったお母さんは恐縮しながらお礼を言っていた。それだけのことだった。なのに、目の前の年増のカップルはいつまでもそちらをちらちらと見て、小声で何かを話している。その目のやりかたとひそひそと話す感じがとてもいやらしい。男の方は、山に登るでもないのにアウトドアの衣類に体を包んでいる。靴までその系統のメーカーだ。そんな衣類や靴は何の関係もないのだけど、この大都会、木の根が這い回っているでもなく、石や枝が落ちているでもなく、枝が覆いかぶさるような道もない、完全に整備されたこの大都会の中で、そんな格好をして、おしゃれのつもりなのか、ラクだからという理由なのか、どうせくだらない理由だ、どうでもいい、バッカじゃないのか、とにかく、そんな服装にはなんの関係もなく、