Shin Yamagata

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12月26日
結婚した男のことをどうしても嫌だと思ってしまうことがある、と最低でも3度は言っていた人妻を原付のうしろに乗せて走り出した。夜の11時を過ぎた住宅街は静かで猫も歩いていなかった。思ったよりも寒くはないなどと背後の人妻と話しながら走っていると、目の前をたぬきが横切った。2匹ではなく1匹だった。原付のライトに照らされたタヌキは冬毛でもこもこになっていて、こちらに顔を向けることなく脇の駐車場に入っていった。駐車場の横まできて原付の速度を落として目を凝らした。車の下に入ったのか、駐車場の奥をどこかに抜けていったのか、たぬきはどこにも見当たらなかった。見た? 見ました。人妻の口調は落ち着いていた。わたしが住んでいる練馬にもいるんですよ。人妻はそう言うのだけれど、今走っているこの住宅街も練馬だった。人妻が言う練馬とは、つまり、環七からほど近い、人妻の住んでいる6階だか7階建てのマンションの、あの、結婚を機にリノベーションをして、こだわりは電気のスイッチの