Shin Yamagata

お知らせ  zine  Twitter   Instagram


 

こんにちは




山奥にある川沿いの小さな集落にたどり着いた。遠くに見えるおじさんがこちらをじっと見ている。別に撮りたいものなんてないのだけど、カメラをかまえて写真を撮るふりをする。道はクネクネとおじさんの方へ向かっているし、それ以外の道がないのでおじさんの方へ歩いていくことになる。おじさんはその場を動かずたまにこちらをチラチラ見ている。おじさんにかなり近づいたところで本当に撮りたいところがあったのでカメラをかまえて写真を撮る。おじさんの方を見るとおじさんは木の陰にそっと隠れてしまう。おじさんの横を通り過ぎるときに「こんにちは」と言う。おじさんも「こんにちは」と言う。おじさんを通り過ぎた先で写真を撮ったりしているうちにすぐに集落の端っこに行き着いたので同じ道を引き返す。おじさんはまだそこにいる。頭をペコと下げ会釈をしてからおじさんのすぐ近くで写真を撮る。「何を撮っているんや」とおじさん。「この辺りの風景です。」と僕。おじさんは何かまだ言いたそうな顔をしながらカメラを向けた先の風景を見ながら歩いていった。