Shin Yamagata

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2月18日
小さな神社は人でごったがえしていて、梅のにおいと人のにおいと醤油の焦げたこうばしいにおいがごっちゃになっていた。都会にある神社だからビルに囲まれていて、太陽の光で真っ白に光る巨大なマンションを背景にすると、梅の枝ぶりが写真にきれいに写った。何人かのおじさんが30センチ以上もある大きなレンズがついたカメラを同じ方向に向けているのはメジロがいたからだった。梅の小さな花にすっとくちばしを差し込んでは次の花に跳ねていくメジロを望遠レンズで見ているおじさんたちはすぐにメジロを見失ってカメラから顔を離した。肉眼でメジロを追うおじさんの手がカメラの重みでぷるぷるとふるえた。大きな声で話しながら歩いているのはたいていおばさんで、人にぶつかりながらも話はやめずにずんずん進んでいく。隅の日陰では野点が行われていて、そこに友人が着物姿で正座をしていた。名前を呼んだ。こちらに気づいた彼女が顔を上げて笑った。頭の上の渡り廊下を潜ると舞台があって、派手な衣装を着て目の周りを黒く縁取ったメイクのおばさんたちが肌を露出した衣装を着て腰を振ったり胸を揺らしたりしながら踊っていた。最前列にはやっぱりカメラを構えたおじさんたちが陣取っていて、こういう人たちがカメラメーカーを潤していた。その脇には、無料で血管の年齢を測定してくれるコーナー(保険の勧誘)だったり、有料の似顔絵コーナがあったりして、野点の友人とは別の友人が似顔絵を描いてもらった。描いたのは東京大学まんがくらぶの学生さんで、おせじにもうまいとは言えなけれど丁寧に