Shin Yamagata

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12月7日
図書館の自動ドアをくぐるとメガネが曇った。レンズの周辺はかなり白くなってしまったのだけど、まったく見えないというわけではないから、そのまま受付に向かった。受付のおばさんが、今日は寒いですねー、と言った。あきらかにわたしのメガネを見てそう言った。寒いですねー、と言いながら借りていた本をカウンターに差し出した。それ以上会話は続かない。ありがとうございました、と図書館の奥へ進んでいく。その頃にはメガネの曇りもおさまってきていた。なぜ受付のおばさんはわたしに話しかけてしまったのだろうか。こ、こ、こ、と「こ」の本棚を探しながらそう思っていた。今まで話しかけられたことなんてなかったのに。目だけは本の背表紙を眺めている。目当ての作家の本がない。文庫本の棚にもない。もうメガネのレンズに白いところはなくなっていた。雪が降るかも、なんて天気予報では言ってましたけど、と架空の会話を受付のおばさんと交わしながら、雑誌