Shin Yamagata

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空き地




仕事場で知り合った人が映画を作ったというのでその映画を見て、10人くらいで飲みに行って帰ってきたらもう夜中の12時をすぎていた。
今日はあんまり毒舌じゃないとか言われながらもたまに何かを言い出だすと、隣に座っていためがねをかけた黒くて長い髪の女に、もうこれ以上言うなという感じで叩かれたりしていた。映画を見た後だったので、映画の話になるのかと思っていたらそうでもなくて、何か違う話をしている時間の方が長かったような気がする。初対面の人がたくさんいたからかもしれない。僕以外の全員はJRの原宿駅に向かったけど、僕は「新宿のジュンク堂書店に写真が飾ってあるので見てください」と最後にもう一度宣伝をして、地下鉄に乗るために一人で明治神宮前駅へ向かった。
家に帰ってきたときにはもう眠くなっていた。布団に入ってすぐに外から動物の変な鳴き声が聞こえてきた。物干しから斜め下に見える(3Fに住んでいる)背の高い草がぼうぼうに生えている空き地の中にたぬきがいるのだろうと思った。あまりに激しく長い時間「ギャーギャー」とケンカをやっているような感じだったので、起きてめがねをかけて物干しへ出た。
出たときにはもう声は聞こえなかったけど、草がユラユラ揺れているのが見えた。空き地の端のほうは草が少なくなっているところがあって、そこにたぬきが出てきたら見えるかもしれないと思って、しばらく空き地を見下ろしていた。すると夫婦らしい二匹連れのたぬきが現れた。鼻を地面に近づけながら、何かを探すようにゆっくりと歩いていた。猫とでもケンカをしていたのだろうかと思っていたけど、もしかしたら夫婦喧嘩だったのかもしれないと思いながら暗い空き地を見ていたら、今度は一匹だけのたぬきが歩いているのが見えた。たぬき同士のケンカだったのかと思いながら、この下の空き地に今三匹もたぬきがいることがうれしくなってきた。空き地は金網で覆われていて、出入り口はたぶん2箇所くらいしかなくて、ちょうどその2箇所はこの物干しから見えるので、そこをなるべく注意して見ていたけど、たぬきが出て行った気配はなかった。まだ空き地の中をうろうろしているのだろうと考えながらまた布団に戻って寝ることにした。
布団に入っていると、また「ギャーギャー」と声が聞こえてきたけど、布団から出るのがもうめんどくさくなっていたので、そのまま寝ようとしていたら、今度は一段と激しく声が聞こえてきて、体がぶつかり合うような、たぬきがたぬきの体に噛付いたまま「ギャーギャー」というような、そういう声が聞こえてきたので、また起きてめがねをかけた。
暗くて見えにくい空き地をまた見ていると、また夫婦二匹連れのたぬきが現れた。相変わらず空き地から出て行く様子はなく、まだ空き地の中をグルグルとまわるみたいだとか思いながらたぬきを見ていたけど、二匹じゃなかった。二匹が歩いている後ろにもう一匹いて、三匹が一列になってほぼ等間隔の間をあけて歩いていた。仲良くなったのだろうか、もしかして親子で親子喧嘩だったのだろうか、やっぱり夫婦たぬきと一匹たぬきで、等間隔に見えて実は微妙な距離があって、その距離を縮めたりしたらケンカになるのだろうか、一匹たぬきが夫婦たぬきとの距離をものすごく詰めているけれど、実は夫婦たぬきに気付かれていないだけなんだろうか、と三匹のたぬきが見えなくなっても色々と思っていたら、さっき三匹が通っていたところを一匹のたぬきがゆっくりと歩いているのが見えた。四匹?まさか、さっきの三匹のうちの一匹が道を逸れてまたここに戻ってきた、いや、でも時間的にも経路的にも少し無理があるような気がする、やっぱり四匹か、でもまさか、とか思いながらまた「ギャーギャー」と声が聞こえたら起きて見てみようと思っていたけど、知らないうちに眠っていた。