Shin Yamagata

お知らせ  zine  Twitter   Instagram


 

ニコン




前回
ああどうしようと思っているとおじさんはカメラに興味が移ったみたいで、これはニコンかと聞いてきた。そうです、ニコンです。わしは昔、ニコン関係の仕事をしていた。でもそんなカメラじゃなくてFの頃のカメラだけど、みたいなことを話し始める。そのデジタルのカメラは今は2、3種類出てるのか?いや、もっと出てますよ。そうか、それはあれか、昔のレンズも使えるのか?使えますよ。そうか、わしもレンズを持っているのだけど、、、、というような話をしていると後ろから自転車を押しているおばさんがこんにちはと、おじいさんに近いおじさんに挨拶をして、コウスケ君?とおじさんに話しかけている。おじいさんに近いおじさんは、はあ?と聞き返して、おばさんはまたコウスケ君?というと、おじさんはいや違う違うと言い、この人はたまたま通りかかった人でここの風景が気に入った人、というような感じでおばさんに僕を紹介した。ぼくはどうもとおばさんにお辞儀をした。おばさんは僕の前まで自転車を押してまわり込んできて、僕の顔を確認して、なんか後姿がスラッとしてるから、、とかいいながら、それではとまた引き返して去っていった。僕は「ここの風景が気に入った人」という紹介のされ方になんとなく引っかかっていたし、全然知らない近所の人たちとこうやって井戸端会議的な状況に一瞬でもなったことが不思議で妙な感覚になっていた。そういう感覚にもっと浸っていたいような気もしたけど、このおじいさんに近いおじさんとこのまま話していると長くなりそうだったので、じゃーあっちに行くんで、とカメラであっちを指して、その場を去ることにした。
つづく