Shin Yamagata

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野良猫




夜中に外で猫が変な声で鳴いているのを布団の中で聞いていた。
朝起きて襖を開けると、こたつの布団の上で丸くなって寝ていた野良猫が慌てて飛び跳ねながら駆けていくのをびっくりしながら見ていたことを思い出した。今はもうなくなってしまった実家の家の障子には飼っている猫がいつでも家と外を出入りできるように穴があけられていて、冬の寒い日にはそこから野良猫が入ってきてこたつの布団の上でよく丸くなって寝ていた。その野良猫は人を見ると逃げるような野良猫でまったく人になついていなかったけど、冷蔵庫に入っていたちくわとかを時々投げているうちにだんだん近づいてくるようになってきていた。ある時、目の前まで来るようになったので、手から直接食べるんじゃないだろうかと思って、手にちくわを乗せて猫に差し出したら、ゆっくり近づいてきて、そのまま食べるのかと思ったらつめを立てた前足でおもいっきり僕の手を叩いて、それで落ちたちくわを食べていた。その時の僕は子ども(中学生か高校生)だったので、この恩知らずとか思いながら野良猫に腹を立てていた。手から血が出ていたし、ヒリヒリと痛かった。