Shin Yamagata

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セミ




展示が終わった翌日の朝は雨だった。窓を開けて雨が降っているのを眺めながら部屋を片付けなければならないと思っていた。雨が上がった時には部屋は一つも片付いてはいない状態で、そのまま外へ出てまだ濡れている地面を見ながら駅前の喫茶店へ向かっていた。アイスコーヒーを頼んで飲んでいたら手がベトベトしていることに気付いた。ガムシロップがどういう理由でそうなったのかわからないけど手についているようだったし、ズボンにも落ちているようだった。ズボンに落ちているガムシロップはズボンの生地に染み込まずに水滴のままの状態で光っていた。それを指ですくい取ろうと表面をスッと撫でた。そういえば昨日ギャラリーの外でセミが鳴いているのを聞いた。夏だと勘違いして出てきてしまったセミが一匹、鳴いていた。鳴いたところで他のセミはまだ出てきてないだろうから、それに応えるセミもいないだろうしまた明日は雨が降るみたいだし、と思っていた。昨日思っていた雨は今日の朝に降っていた雨のことだった。