Shin Yamagata

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自転車




タラタラと自転車をこいでいた。近所で3つの用事を済ませてそれでタラタラ自転車をこいでいた。家を出たときは少し晴れ間があって光も射していて、それでも空には薄い雲がかかっていたし、遠くのほうには重たい雲も見えていたので、地上が光に満ちている感じと空のスッキリとしない感じとのバランスがアンバランスだと思っていた。帰りにはもうすっかり曇ってしまっていて、空の色と地上の色とのバランスも程よい感じになっていて、それで住宅街のそれほど大きくない道をタラタラと自転車をこいで家へと向かっていた。僕はタラタラ自転車をこいでいたので、いつでもすぐに止まれるような状態だった。そこに交差点の左側の道からものすごいスピードの自転車が車体を斜めにしながらカーブを曲がってきたのが見えたのであっと思って止まったところにその自転車がぶつかってきた。乗っていたのは二十歳前後の若い女の人で全体的に丸い感じだった。ぶつかる直前の相手の顔は真っ赤になっていたし、「あ、ぶつかるっ」って顔もしていたし、そのときにはもう相手はブレーキをかけていた。丸い顔のほっぺたは特に赤くなっていたけど、おでこも同じくらいには赤かったような気もする。僕の自転車の前輪の左側側面に相手の自転車の前輪の先端がぶつかって、お互いよろけはしたものの倒れることはなかった。僕はもうすでに両足を地面につけて待ち構えているような状態だったので、どちらかと言えば相手の方が倒れそうになっていた。倒れかけている自転車をたて直しながらその人は「すいません」と言った。僕は黙って「うん」という感じで首を縦に振った。そしてその女の人はまた猛スピードで自転車をこぎ始めていて、その後姿を見ながら、あんたが来た道の交差点の地面に「止まれ」って書いてあるやんって思っていた。