Shin Yamagata

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一本




また洗濯物が落ちているかもしれないと思っていた。風は茶色や黄色になった葉を枝から引き離しあちこちへ飛ばしていた。葉は青い空を背景に空を漂いキラキラと光っているように見えたが光って見えるのは錯覚だろうとそのキラキラを見ながら思っていた。枝から葉が離れる瞬間を見たいと思い凝視しようと試みるものの風がワーと吹くと木がまるまる一本その風で揺さぶられ、葉と葉が擦れあい枝と葉が擦れあい枝と枝が擦れあう音が響き、その音に囚われている間に凝視は解かれ、そもそもその揺れによって凝視は定まらず枝から葉が離れる瞬間などは見ることができないであろうことはなんとなくはわかっていた。葉だけでなく枝も頭上から落ちてくる。地面に落ちた葉は風によって右へ行ったり左へ行ったり渦を巻いたり隅のほうに溜まったりしながら止まることなくたえず動き続け、地面と葉が擦れあい、またそこでも葉と葉が擦れあいカサカサという乾いた音を出し続けていた。