Shin Yamagata

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電車の中はもう比較的空いていた。窓の外には夏っぽい雲が浮かんでいる青い空が見えていた。いつもなら建物とか道とかその道を歩いている人だとか植物に目がいってしまうのだけど、空ばかり見ている間に乗り換えの駅に到着してしまっていた。電車を乗り換えてからはもうあまり空は見えない。空は見えないけれど空からの光に照らされている建物とか道とかその道を歩いている人だとか植物が見えてくる。それらの見えてくるものにはいつもと違う空の気配が漂っている。駅を降りて歩いていると道に落ちている木の影や、雨が降った痕跡が見えてくるがもうそれらに空の気配を感じることはない。横を早足で通り過ぎた女の人が振り返ってわたしを見た。