Shin Yamagata

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ポッキー




部屋の扉を開けると壁際に置いてあるパソコンに向かって話し込んでいる男と女の姿が目に入ってきた。その男と女の後ろを通り過ぎてソファーのあるところに行くと、「これお土産です。」と長野に行っていた女Aが林檎味の巨大なポッキーをテーブルの上に差し出した。そばにいた男Aがさっそく封を切り、「これすごい林檎の匂いがする。」と言ったものだから女Bと男Bもソファーのあるテーブルに近づきその巨大なポッキーを食べ始める。パソコンの前に座っている男と女はそれらのやりとりを聞いているのかどうかはわからない。外からはまだ蝉の声は聞こえていない。ポッキーを囲んで男A女A女B男Bは女Aの長野に滞在したときの話を聞き、女Aが昔金髪にしていたことを話の流れからそのときはじめて男A女B男Bは知ることになった。パソコンの前でさらに深刻そうに話を続けている男と女はそれらの話題に食いつくことなくパソコンに向き合い続けている。その二人を男Aと女Bはそれぞれ別々の関心の持ち方で横目で眺めていた。