Shin Yamagata

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5月23日




終電車に乗り込むとあの人が座席に座っていた。あの人のことは知っているのにしゃべったことはないから名前も知らなければどんな人なのかもわからない。あの人が一人でいるのを見るのははじめてだった。誰かと一緒にいるあの人と一人でいるあの人は同じ人なのに違う人のように見えてしまうのは誰もがそうであって自分自身も例外ではない。ときどき横目でちらっとあの人を見る。あの人はわたしのことを知っているのかどうかはわからない。わたしのことを知っていて目が合うと困るから人影に隠れる。気になるからときどき電車の揺れに合わせて体をずらしてあの人のことを見る。携帯電話を眺めるあの人の携帯電話はアイフォンではないけどスマートフォンだ。あの人がアイフォンではないスマートフォンを持っているということを知った。