Shin Yamagata

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2月11日




仕事帰りの電車は空いていた。赤いシートに腰をおろしたのだから丸ノ内線なのだろう。目の前に座っている女をどこかで見たことがあると思ったのだがきっとすでに三度は会っているはずだった。女の唇が動いた。「そ・こ・で・ま・が・れ」と何度も女は唇を動かす。わたしは曲がらなければならない。わたしは曲がった。ちょうど後楽園だった。曲がった先には白山通りがあり、白山通りから少し入ったところにある歯医者に嫁いだ女の住むマンションが見えそうで見えないところでわたしは立ち止まった。すでに女の姿は見えない。