Shin Yamagata

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6月14日




右足を前に出すと左側へぴょんと、左足を前に出すと右側へぴょんと跳ねるポニーテールの若い女の子に追い越され、女の子が見えなくなるまで右へ左へと跳ねる髪をぼんやりと見ていた彼は足元にヤマモモの実が落ちているのにふと気がついた。大学の構内に植えられていたヤマモモを見て初めてヤマモモという木を知った彼は大学を卒業して20年以上過ぎているのにヤマモモの実の形は覚えていたのだった。彼は懐かしいと思い、落ちている実をつまみ匂いを嗅いだ。匂いと記憶は密接に結びついている。しかし彼は大学在学中ヤマモモの実は見ていたのに匂いを嗅いだこともなかったし実を拾ったこともなかった。