Shin Yamagata

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12月9日




電車に乗らない一日は近所の周りを少し移動する日で、公園のわきにある天然酵母を使ったパン屋は閉まっていた。天然酵母とそうでない酵母でどのようにパンが変わるのかは知らないし、「天然」という言葉にはいつもどこか胡散臭さを感じていた。公園の落ち葉を踏んで公園の西側の出口を抜け駅前へと続く道へ入る。商店街はクリスマスだ。ぶら下がったサンタを指差す子どもの手を引き急ぐ母親の顔を以前もこの商店街で見ているはずだった。それはしかしいつのことだかわからない。彼女は去年の今頃もこうして電車に乗らない日は商店街を歩き、商店街には今と同じように陽気な音楽が流れていた。そして次に向かう場所も決まっている。いつものあのまずいコーヒーを出す喫茶店だ。彼女は今日その喫茶店でいつもは飲むことのないココアを飲むことになる。