Shin Yamagata

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9月16日




あのときの地震のときもわたしは喫茶店で本を読んでいた。そのとき読んでいた本は覚えていないけれど揺れているときにコーヒーがこぼれないようにグラスを持ち上げていたことは覚えている。あのときもアイスコーヒーだった。今回の揺れは前のときほどではないけれどわたしは相変わらず席に座ったまま動こうとはしない。こういうとき、すぐに店を出るなりなんなり動いた方がいいのではないかと思っているのに実際の場面になると周りの様子ばかりを見てしまい動こうとはしない。スーツを着た男はすぐに席を立って店の外へとび出した。キャーッという小さな悲鳴が聞こえた。斜め前に座っていた杖を持った足の悪そうなおばあさんが不安そうな顔をしている。そのおばあさんを見たり、店の外の道路標識のポールがゆらゆら揺れているのを見たりしていた。杖を持ったおばあさんの隣に座っていたスーツを着た若い女の人がおばあさんに「こわいですね、大丈夫ですか?」と声を掛けた。