Shin Yamagata

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2月20日




お鍋にいっぱいあった豚汁がようやくなくなったからといって食べ飽きていたわけでもなかった彼女はあと数日豚汁が続いてもまだ飽きずに食べ続けることができたかもしれないと思うのはやっぱりちょうどいい感じで豚汁がなくなったからで明日も豚汁を食べていたらこんな風には思わなかったかもしれないとお椀の底に残った小さな豚肉の切れ端を見て思っていた。お椀の上にお箸を置き、足を組んで栞の挟んである読みかけの文庫を開いて続きの一行を読みはじめたときにはもう豚汁のことを忘れている彼女の集中力が続かず文字が頭に入ってこないのは昨日のあの男の言葉を思い出し顔が火照るくらいにまたむかつきはじめていたからだ。怒りは彼女の内側を破壊していく。