Shin Yamagata

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9月11日


春先か夏の初めだったかの火事で燃えてしまった場所はついこないだまで屋根や壁が崩れ、黒焦げになった何かや燃えていない布団や燃えかけのソファーなどがそのまま放置されていたのに、今日その場所を通ってみれば更地になり、その更地に入り込んでいく年老いたおじさんの姿を遠くから眺め、道がカーブしているためにおじさんがそこで何をしているのかは見えないのだけど、その現場に近づいたときにはおじさんは土が剥き出しになった更地から舗装された道路へと戻り、西日に照らされガランとした更地を眺めている。ほんの少し歩けば駅の南口にある商店街にたどりつくこの場所は細い路地が曲がりながら入り組んでいる住宅街だから、そこにあった建物がなくなっただけで、記憶にあるその場の風景のバランスが崩れたのか、その場所は急に知らない場所のようなものになってしまい、今まで見えているはずなのに見ていなかったものが目に飛び込んでくるからその場所を知らないように感じてしまっているだけなのに、おじさんはどうして更地の奥へ進もうと思ったのだろうか。