5月16日

寝てしまい、目を覚ましたときには聞きなれない駅名だった。降りる駅を3駅通り過ぎてから目が覚めたようだ。ホームでは傘を持った人たちが電車を待っている。しかしこのホームでは雨は降っていない。ここは地下鉄だ。外では雨が降り出した。到着した電車も濡れているから、地上を走ったのちに地下へと潜り込んだ電車がこの駅へきたことになる。ここは東京だ。戻らなければならない。次の駅に到着したとき、ずぶ濡れになった若い女が乗ってきた。傘は手に持っているのにずぶ濡れなのだから激しく雨は降っているし風も吹いている。扉が開いたときに微かに雨の匂いがした。地下にまで雨の匂いは届いていないはずだ。そのずぶ濡れの若い女が雨なのだ。雨は女だ。