9月11日

みんなの前で平気で嘘をつける人間がいて、その嘘を見抜ける人間は限られていた。善良な市民の仮面の下には当然別の顔があるとしてもその別の顔が本来の姿であるかどうかはこの際どうでもよかった。別の場所ではコーヒーとティラミスを前にすべてが仕組まれ計算されたことだという話が持ち上がっているのだが、計算されてしまうような人間になるわけにはいかなかった、あるいは計算されてしまうような人間関係の中からは早く抜け出なければならなかった。計算式が成り立つような人間関係の中でしか生きていくことのできない人間は今後どのように生きなければならなかったのか、彼女には考えてもわからないことがたくさんあった。