Shin Yamagata

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5月23日




満員だから引き返した。それから寝てしまった。目が覚めた部屋の中は少し薄暗くなっている。外へ出ると日が沈みたてのまだ明るさの残る空の色は濃いピンク色になっていて、すれ違う人全員がその空を眺めて歩いている。ピンク色の空はすれ違う人の見上げる顔やマンションの白い壁、マンホールの蓋もピンク色に染めていて、視界に入る光景のほぼ全体がピンク色になっていた。商店街で小さな女の子が母親に向かって「どうして今日の空はこんな色なの?」と聞き、母親が「知らない」と答えるのを聞いて、この子どもの疑問はこの子が大人になるまで疑問として残ることは可能だろうかと考えた。68円のしめじと30円のサニーレタスを買って古本屋の店の外に出ている本棚で雪舟の画集を眺め、ピンク色がわずかに残る空を眺めた。