Shin Yamagata

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4月19日
下の方から木を打ち付けるようなバタンバタンという音が聞こえていたのは、どうやら坂の下に見えはじめたじーさんが原因らしい。坂道で耕運機が倒れたらしく、耕運機の下に丸太を突っ込んで、てこの原理で耕運機をおこそうとしているのだけど、うまくいかないようだ。坂を下っているわたしに気付いたじーさんはこちらをじっと見ている。近づいても目を離さない。近づくにつれてガソリンのにおいが漂いはじめる。「おこしてくれ」予想していたよりも弱々しい声で話しかけられた。タンクからはガソリンがちびちびと漏れ出ていて、坂道に黒いシミを伸ばしている。「せーの」と相変わらず弱々しいじーさんの声に合わせて耕運機をおこそうとするのだけど、重くて持ち上がらない。力を抜くとジャリッと耕運機と地面が擦れる。まさか火花が散ってボンってことはないよな、と不安になりながら二回目の「せーの」がはじまる。