Shin Yamagata

お知らせ  zine  Twitter   Instagram


 

てんとう虫








曇っていたから喫茶店で本を読んでいて、帰ろうと思って店を出たら晴れていて、ものすごく損をしたような気分になっている時に、色が変って青くなった空の、その青い色がなぜ青いのか無性に気になりだしたりする帰り道の途中にあるパン屋さんは「5時頃閉店」と書かれた看板が下がっていて、まだ4時過ぎなのに閉店になっていて、ちょっと今日は早すぎるんじゃないの?って思ったけど、別に今日はパンを買う必要もなかったし、パン以外にも何も買う必要はなくて、家に帰れば冷蔵庫に昨日作った晩御飯の残りがあと三日分くらいは残っていて、だいたい何か作る時に一食分だけ作るのはあまりにも効率が悪いし、そんなことしてると野菜とかも中途半端に余るだけだからどうしても何日分かまとめて何かを作ることになっていて、弁当なんかを次の日に作るくらいならそれをそのまま詰めればいいのだけど、かばんに弁当詰めて喫茶店に行くわけにもいかないから、別に弁当のことなんか考えなくてもいいはずだったのに、ちょっと「弁当」って思ってしまったからこんなことまで考えなくてはいけなくなったけど、そんなことより近所のある一帯の木にアブラムシみたいなのが異常に発生していて、木の葉がどんどん枯れたり穴が開いたりして、ポロポロ葉っぱが地面に落ちたりしていて、一時はそこにすずめがよく寄ってきていて、その木の下のアスファルトの地面をしきりに突いていて、きっと下に落ちたアブラムシか何かを突いているのだろうと思ったけど、じゃーなんで葉っぱについているアブラムシを直接突かないのかわからなかったけど、すずめもアブラムシがいっぱいくっついた葉っぱの近くにはあまり近づきたくないのかなと思ったりしたけど、そんなことはないのはわかっているから、なぜ、アスファルトの地面を突いていたのかはわからないと書いて、今ふと思ったけど、もしかして地面に落ちたアブラムシを突いていたわけじゃなくて、別の用事があって地面を突いていたのかもって思ったけど、その別の用事ってのに全然思い当たることはないんですけど、そんなすずめの話じゃなくて、そのアブラムシを食べるためにてんとう虫がまた異常に集まってきていて、葉っぱの裏はアブラムシとてんとう虫だらけになっていて、よく見るとてんとう虫の幼虫もうろうろ葉っぱの上を歩いていたりして、てんとう虫の幼虫なんて久しぶりに見て、はたしてこれはてんとう虫の幼虫なのかなんなのか一瞬わからなかったけど、たぶんてんとう虫の幼虫だろうということにしていて、そうするとてんとう虫の蛹もいてもいいはずだけど、それは見かけてないな〜と思っていて、でも幼虫がいて成虫がいたらどこかに蛹もいるだろうと普通は考えてしまうもので、いや〜、しかし昆虫というのはビックリするぐらいの変化をするもので、人間なんか生まれてから死ぬまでにほとんど変化しないけど、そりゃー、赤ちゃんと老人はかなり違うように見えるけど、大雑把に言えば手も足も頭も胴体も目も耳も口もだいたい変ることはないけど、あの昆虫の変化というか、変身ぶりは仮面ライダーの変身ぶりよりも激しくて、ブニョブニョのそのそ動き回っていた毛虫が、ある時期固まったと思ってしばらくしたら、殻を脱ぎ捨てて出てきた奴は羽を持っていて空を飛んだりするからそれはもう劇的な変化としかいいようがなくて、そういえばその蛹になって固まっている時に蛹の中で何が起こっていきなりあんな羽とか、カブトムシなら角とか、カチカチの外皮だとか、でっかい複眼とかが出来上がるのかはいまだに謎というようなことを大学の時に聞いていたけど、あれからそのへんは解明されたのかどうかわからないけど、トンボだって最初は水中でモソモソ生きてたと思ったら、いきなり外に出て、一晩のうちに殻を破ったと思ったらもうトンボになって空を飛びまくって、飛びながら獲物を捕まえて、ホバリングまでできてしまう飛行技術を持っていて、もうなんていったらいいかわからないけど、それはとにかく素晴らしいというしかないんだけど、近所ではひとまずアブラムシとてんとう虫の抗争が始まっていて、アブラムシが増えていくスピードとてんとう虫が増えていくスピードによってこの抗争には決着が着く筈だけど、あまりにもお互いの量が多すぎて今のところどちらがどうなるかなんて全然想像がつかないうえに本当はあまりそんなことにも興味がない。