Shin Yamagata

お知らせ  zine  Twitter   Instagram


 

遠足




中学生の時に全校生徒で学校から吉野山まで歩いて行って、吉野山で弁当を食べて帰って来るという遠足があった。その時になぜそのような暴挙がなされたのか、そしてその暴挙が許されていたのかわからないけれど、野球部と陸上部は走っていけ、という命令が下されていた。僕は陸上部だったので陸上部の人や野球部の連中と一緒になって、なんで俺らだけ走らなあかんねん、とブーブー文句を言いながらもあの頃の学校の大人達には逆らうことが出来なかったので、しぶしぶ走ったり歩いたりしながら吉野山へ行き、弁当も食わずにそのまま走り続けてちょうどお昼くらいに一番乗りで学校に戻ってきてしまっていた。誰もいない学校は静かで、人のいない廊下や教室はいつもと違うように見えていて、というか何か別の空間にいるような感じで、それにまだみんなは吉野山に着いたか着いていないかくらいの頃だし、きっと楽しくしゃべったりしながら弁当を食べたり、歩いたりしているのだろうというのが頭の片隅にずっとあるから、誰もいない学校にいるというのが何か不思議で、一緒に走ってきた五人くらいの陸上部の同級生や先輩達と浮ついたような気分になっていたことを覚えている。そして自分のクラスではない誰の机かもわからないところへ座ってみんなで弁当を食べながら、今日は部活の練習を休みにしてほしいよな〜、とかそんなことを言っていた。
それで今日はその遠足を二十数年ぶりにやり直そうとカメラを持って吉野山に向かって歩き始めた。ジグザグノロノロと写真を撮りながら歩いていたので吉野山に着いた頃にはもう夕方になっていて、そこからはしばらく道と木しかないような山道に入っていくことになり、それはもう嫌だからというので、帰りは電車に乗って帰ってきた。それにしても今日も一日中曇っていて嫌になる。