Shin Yamagata

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実家の近くを歩いていたら「佐々木君け?」っておじさんに声をかけられて、「ああ、どうも、、」って言いながら、何かまだ話し足りない感じを体からにじませている、というかもう一声何か言い出しそうな気配のおじさんを見ていると、なにか少しちょっとめんどくさいというかはあ〜あという感じで、「久しぶりやな〜」っておじさんは言葉を続けたけども、久しぶりもなにも、そんな「久しぶりやな〜」って声をかけ合うほどの間柄でもないでしょうし、僕は今しゃべりたくないですよ、だいたいあなたと前に話したのはいつですか?っていうかまともに話したことなんてないですよね、「久しぶりやな〜」って言葉にはだから違和感があるんですね。どうせならですよ、「ああ、めずらしいもん見たわ〜」くらいの方がより適切なわけです。ぼくらの間にはそういう関係しかなかったわけです。というか関係などあったのでしょうか?かつて同じ町に住んでいた、それくらいの関係でしょう。もしくは僕の親との関係は何かあるのかもしれません。しかしだからといって「久しぶりやな〜」と言葉をかけ合うほどの関係はないですし、だいたい年齢が違いすぎますからそんな馴れ馴れしい感じではなくてむしろ「おう、なんや、お前、帰ってきてたのか」くらいでもいいんじゃないですか?いや、そんな風に声をかけられたらまた「なんでえらそうにしてんねん」って具合になるのは必至なんですが、それにしてもおかしいじゃありませんか、通り過ぎるときにそんなにジロジロ見るのもやめてもらいたいです。そうやってジロジロ見ながら何か声をかけるチャンスをうかがうというのか、何かこちらから一声出させようとうながすような目つきというのか、そういうのはあなたの嫌なところだというのは間違いなく、そしてそれはこの町全体に関わることなのでしょう。僕が小さな頃にはこの町にも最低でも六つの小学校があった。しかし来年からは一つになってしまうという話を聞きました。そのこととそのあなたのその目つきが無関係だとどうして言えましょうか。あなたはいつもそのような目つきで町をほっつき歩き、小さな子どもを見つけては「おう、なにしてんねん?」と気安く声をかけ滅多に見かけない人物がいればジロジロと眺め「久しぶりやな〜」と声をかける。そうかもしれない、久しぶりだったのかもしれない、でも本当は久しぶりではいけないということにあなたは気付かなければならない。久しぶりではいけないというわけではない。久しぶりというのは過去があるということになるが、そういう意味に於いて久しぶりというわけにはいかない。これはせっぱ詰まった問題である。久しぶりである必要などどこにもない。だいたいあなたは変わっていた。背は低くなり背中も少し曲がり肌の色も黒くなっていた。同じように僕も変わってしまっている。しかし、変わっていないところもたくさんあった。そしてその変わっていないところが重要なわけだった。そこだけが唯一新しいところでもあったからだ。