Shin Yamagata

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11月20日




やはり電話をしてもいなかった。もう電話をするのは無駄ではないか。居留守だろ?そうだろ?
夜、自転車とおばさんがぶつかった。自転車は無灯火。交差点を止まりもせずに曲がってきた自転車はおばさんにぶつかって倒れた。もちろん自転車は無人ではない。若い男が乗っていた。若い男は黙って起き上がった。おばさんは右手で左手を押さえながら「危ないじゃないのよ、痛いわよ。」と少しふるえる声で言ったにもかかわらず若い男は無言で自転車を起こして立ち去ろうとした。「おい、待て!あんた黙ってるのはおかしいやろ。すいませんとか大丈夫ですかとかなんかあるやろ。」わたしが一番怒っていた。わたしの声は思ったより大きく住宅街の細い路地に響き渡った。わたしの突然の剣幕ぶりにおばさんも若い男もびっくりしている。
半分くらいに欠けた月が薄い雲に透けている。