Shin Yamagata

お知らせ  zine  Twitter   Instagram


 

3月10日




黄砂だとみんなが言っているから黄砂だと思っていたら「煙霧」というものだったらしい。その黄色い空の色を見て「黄色の日」という柴崎友香さんの小説を思い出して(「ビリジアン」に収められている)、そこに出てきた先生と生徒のやりとりのようなことをぼんやり思い出した。正確にはやりとりを思い出したのではなく、あの小説に書かれていた「感じ」が黄色い空を見てじわっと蘇ってきたということだった。皇居の周りでは風が吹き荒れるその煙った空気の中をジョギングする人が数え切れないくらいいて、そこまでして走りたいのは人間としてどこかおかしいのではないかと考えた。普通なら岩陰や穴ぼこや大きな木の影でじっとしているものだ。そのことよりも夕方から急に気温が下がってきてまた冬のようになり少し安心するものの、気温の変化が激しすぎるのも体に負担がかかりそうで嫌だから家に帰ったらひとまず部屋をあたためたいと、ストーブの赤い炎のことを考えて歩いていた。歩いているときには暗くなっていたから「黄色の日」はもう終わっていた。