Shin Yamagata

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6月23日




日曜の朝の地下鉄は空いている。赤いラインは丸ノ内線。空いていても座席の端っこはすでに埋まっているから座席の真ん中辺りに座って車内をぼんやり眺めていると、扉をはさんだ一つ向こう側の座席の一番奥に吐瀉物。一般にはゲロと呼ばれるものが座席とその周辺に撒き散らかっていた。だからその周辺には誰も座らない。その吐瀉物を見ているだけで気持ちが悪くなりそうだったけど、匂いがないから気にしないようにしてそのまま同じ座席に座っていた。いくつかの駅が過ぎて目を開けると、目の前に座っている細くて足の長いおばさんが右の方を向いて首をブルブルと振るわせた。変なおばさんだと思ったらもう一度右側を見てまた同じように首を横にブルブル振る。アメリカ人なら肩をすぼめて首を振ったのかもしれない。おばさんが見た方を見ると吐瀉物が撒き散らかされていたところに一人の男が座っている。男の見た目は薄いピンクの半ズボンに、半ズボンといわずにクロップドパンツというのか、薄い水色の半袖のシャツを着て、髪はほどほどに長く、チューチュートレインのエグザイルにこんな奴がいてもおかしくないというような感じの男だから肌は浅黒い。その男は耳にイヤホンをしてスマートフォンの画面を眺め続けている。そんな男だからエグザイルの動画を見ているのかもしれない。男はエグザイルの動画に夢中になったまま車内に乗り込み、ここガラガラやんけ、ラッキー、と思ってスマートフォンを見ながら座ってしまったのだろう。少し笑いながらその男を見ていると、目の前に座っているおばさんがその男のほうをチラッと見てまた首を横にブルブルと振った。チューチュートレインの男は吐瀉物の真上に座っている。