Shin Yamagata

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12月12日




クヌギやコナラに混じってアカマツがありその向こう側には大きなケヤキの木が見えている。かつて武蔵野にあった雑木林の面影を残す公園は一面落ち葉で埋め尽くされている。この公園の木々は昔からここに在ったわけではなく三十年前に人の手によって植えられた。植えた人間は武蔵野のむの字も知らない地方からやってきた男たちだった。にもかかわらずこの公園には「かつての武蔵野の面影が…」と言いたくなるような雰囲気が充満している。女は落ち葉がこすれる音を聞き、落ちてくる枯葉を見るためにケヤキを見上げる。子どもは落ち葉の上でサッカーボールを蹴っ飛ばす。木々が三十年でこんなに大きくなったのは地方からきた男たちの植え方がよかったからではない。