Shin Yamagata

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3月6日




頭を丸めた野球部の高校生らしい4人が店の入り口に置いてあるベンチに座っていた髪の長い男三人に頭を下げて挨拶を交わしているのを遮るようにして高校生が行くような洋服屋に入ると女子高生か女子中学生がカラフルな洋服を眺め薄い髭を無理やり伸ばした店員がどうしてお前のようなおっさんがこの店に入ってきたのだという視線をこちらに送りつけてくる。つまりわたしと目があったからといっていらっしゃいませとは言わない。わたしはその店員の横を通り過ぎたときに「試着はどちらで?」と聞いてみた。「こちらですが、何を試着しますか?」と聞かれてわたしは何を試着するのかまだ決めていないことに気がついた。そもそもわたしは試着したいわけではないし、何かを買いたいわけでもなかった。わたしはこの店を通り過ぎたかったのだ。店員は「こちらのシャツなどいかがでしょうか?」と色の薄過ぎる青いシャツを差し出した。「もっと濃い色を!」とわたしは店員の横を通り過ぎようとした。「そちらへは行けませんよ。」と店員はシャツをたたんでいる。