Shin Yamagata

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7月20日




朝から雨だ。カメラと三脚を宿に置いたまま外へ出て国際通りへ向かう。国際通りはお金がないとどうしようもない。土産物屋が並んでいて特に何かを買おうと思っているわけではないし、売っているものにも興味がないし、それでも百円でちんすこうを買って食べながら県庁の方まで歩いた。沖縄歴史なんとか館というところに入ると1959年に井上孝治という耳の聞こえない人によって撮影された沖縄の写真が額に入れられず透明のアクリルで囲われた陳列棚に印画紙のまま数枚置かれてあった。その写真がすばらしい。すばらし過ぎてもっと見たいと思って聞いてみると閲覧できるということで資料室に案内された。手袋をはめて見たファイルに入れられた写真はどれもすばらしい。どれもすばらしいは言い過ぎた。でもほとんどすばらしい。写っているものがおもしろいというのもあるけど、撮り方がすばらしい。スナップの達人だ。そういうことではなくてもそこに写っているもの、人、風景が興味深い。興味深いと思うに至る過程には撮り方も影響しているわけだけど、そういうことはおいておく。政治的な何かを読み取ろうと思えばいくらでもできるだろう、それは見る側の自由だ。しかしわたしはもっと手前に留まった。本土の1959年の風景も写真でしか知らない。その写真と比べてみれば何かを言いたくなるかもしれないけどそういうことでもない。1959年の沖縄が写っている。そこに暮らしている人が写っていて風景が写っている。